ふとした仕草の孤独感
さららんサヨナラウィーク。3日目は『SLAPSTICK』
作品全体は
「20世紀初頭の実在の映画監督、マック・セネットの生涯を年老いた彼の回想形式で描く
伝記ミュージカル。アメリカで初めてのスラップスティック・コメディを監督し、
キング・オブ・コメディと呼ばれたマック・セネット。ラブ・ロマンスを軸に、
創世記のハリウッドで映画製作にかかわった人々の汗と涙と笑いの日々を描くドタバタ青春群像劇。」(抜粋)
としておきながらも決して初めから最後まで笑い通しじゃない(むしろ後半は重め?)この作品。
霧矢主演のバウでさららんが演じてたのはルドルフ・アーバス(ルディ)
彼は配管工から役者志望でNYにきた青年で、偶然セネットと出会う所から始まります。
印象としては田舎(カンザス)からきたちょっと弱いおぼっちゃん。
いつも行動派セネットの後についていって役者志望なのにコメディの世界に踏み込んじゃう。
それでもマルグリットという恋人にも恵まれて幸せいっぱい…
と、ここまでが第1幕。
第1幕がルディの夢や幸せだとしたら、第2幕は現実や孤独といった所。
そのきっかけは恋人との破局(逃げられた)
彼女は育ちのいい娘でコメディ役者と釣り合わないと言われていて。
でも当人同士が好きあってたからルディには現実が分からなかったんだと思います。
マルグリットもルディが好きだった、でも釣り合いという現実を知っていた。
それだけの差。
でも結局ルディは自殺未遂を起こす。
そこで死ねれば(言葉悪いけど)まだ良かったのに、生き延びてしまう。
最愛の人が隣にいないままずっと…
この辺り(第2幕)からルディの負の一面が強く見えてきます。
物語全体としても1幕ラストでアメリカの世界大戦参戦が決まるのでルディ+戦争で
一気に楽しい印象とはかけ離れていきます。
その様子をセネットが「これこそスラップステックコメディだ」と皮肉るのがすごく印象的。
さて第2幕のルディ、個人的にはここのルディが一番好きです。
まずビジュアル的に(おい)パーティに出席するルディは泥酔状態で、みだれた髪に
ゆるく締められたネクタイ…はい最高!!
あ〜お馬鹿ですね(汗)でもいいの、男役は見た目で勝負!
ってさららんには見た目以上のものにいつも惹かれてるんだけど。
話を戻して、あと好きなのはやはりさららんの演技。
ルディは恋人との破局後酒びたりになり、普通の役者としてもコメディ役者としても
中途半端な状態になるんですがさらにここで実は殺人疑惑をかけられる。
その時の演技がもう真に迫るというか…若干鬼気迫るものがあって。
初めてビデオで見た時に瞬時に引き込まれた事を思い出します。
一番印象的なのは目。
酒びたりで酔っている時の目は全てに中途半端な自分を笑ってか、うつろで空虚な目をしてます。
酒の力を借りても心の奥底では酔えない哀しさ、空しさ…
そして殺人疑惑をかけられた時の目は全ての現実(恋人を失くした、女優を殺した)に追い詰められ、
自分を責め立てる恐怖や恐れしか写していない目。
何で思うがままに出来ないんだろうという歯痒さ、絶望の沼から抜け出せない苛立ち。
全てがその目に集約されていた気がします。
第1幕ではあんなにキラキラした目で夢を追いかけ、幸せボケしたかのような笑顔をしていたというのに。
一つの作品、一つの役でこうもガラッと雰囲気を変えられるものなのか。
やっぱりさららんは芝居(演技)が大好きなのかなと思いました。
崩れながら「僕は誰も幸せにする事ができないんだ」と叫ぶ言葉はルディの本心のようで胸が痛みます。
でも彼は(セネットも言ってるけど)幸せ者なんですよね。
色々あったけど脚本家のジェニファーという仲間がいつもルディを支えてくれて。
それは愛情といったものを超越したかのような関係性で。
彼はあの後(殺人疑惑の後)役者復活し出して、すぐ交通事故で片足を失います。
こう見ると、とことん不幸の人物だけど死ぬまで世話をしてくれたのがジェニファー。
そしてルディの死後、彼女がルディを基にした物語を書く。
これほど幸せな事はないでしょう?
本心を叫ぶ時もじっと見守ってくれたのはジェニファーだったし。
いつもは明るくて弟みたいにいじりたくなるけど、誰よりも人の支えを必要として脆いルディ。
そんな彼をどうしようもなく愛しいと思ってしまうのです。
そう言えばこの作品って映画の『五線譜のラブレター』と似てますね。
全体的な流れがちょっとリンクして(今回見直した時)さらに泣けました…
さて、明日はこれまた熱い男です。