Madama Butterfly

『明智小五郎の事件簿/TUXEDO JAZZ』 その時まで女を磨くわ


気付けば‘すみれとさくらの名コンビ’と呼ばれてすでに一年以上が経過して。
私もようやくこのコンビを拝見することが出来ました。
というか花はもともと観劇率が低いのに加え『マラケシュ』以来なので殆ど未知。
でも今回は新コンビもだけど、江戸川乱歩な世界に惹かれまくっていざ日比谷へ。

明智小五郎の事件簿
超有名な江戸川乱歩の『黒蜥蜴』を原作にした、宝塚の異端児キムーラの挑戦作。
結果は…可もなく不可もなく、かな。
すごく良い!と思った場面もあるけど、すごく嫌!と思った設定もある。
まず受け入れがたかったのは「これは江戸川乱歩(原作)の黒蜥蜴か」という点。
確かに表面はなぞってるので原作と言えるのだろう。
三島由紀夫verのように演出者なりのオリジナルを入れるのもいい。
だけど木村先生は少し江戸川乱歩世界から逸脱しすぎだと思うのです。
つまりは自分が思っていることが乱歩より前に出すぎているということ。
これはもはや江戸川乱歩原作とは言い難い。
黒蜥蜴は少女じゃ駄目なのです。
明智と対等で(意図的に)翻弄できる大人な女性じゃないと駄目なのです。
兄妹である時点で明智と黒蜥蜴の対等関係は崩れてしまった。
これでは全てが台無し…
木村先生って途中まではいいんだけど最後で作品全てを壊す傾向があるよーな。

江戸川乱歩という世界を知らなければ又は拘らなければ、推理作品として面白い出来です。
ただ私は10年以上も江戸川乱歩ファンをやってきてるから、あの設定を認められなかった。

あとどうしても引っかかるのが黒蜥蜴も葉子も言ってる‘男を知らない’という言葉。
この作品でそんなに処女性が必要ですか?いや、必要じゃない。
たとえ必要でも頻繁に言葉に出さなくてもいいじゃないか。
だから純粋なんですよ、とでも言いたいのでしょうか?分かりません。
こういう所は「あ〜男の先生だよね」と苦虫を潰したような気持ちになります。
先生、もうちょっと男女共同参画社会を勉強しましょうね(苦笑)

正直なところ乱歩作品を宝塚で舞台化するのはすごく難しいと思います。
あの一般受けしない、一種混沌とした世界は綺麗で華やかな世界とはまた違った美しさなんですよ。
映画の「乱歩地獄」もそれはそれは不条理でドロドロしてましたし。
もし宝塚で挑戦していただけるなら、是非ショー作品で見てみたいですね。
『アルバトロス』2幕の‘場末のサーカス’とか『パッサージュ』‘玻璃の街角・地獄’辺りは
すごく似ている気がしますので…ってどっちもオギーじゃん(笑)

黒蜥蜴の変装から明智の推理、逃亡までの一場面は舞台の使い方や、テンポ良い展開に好感触。
セリがエレベータの役割になってるのも新鮮で面白い。
そして「だから日本の男は戦争に負けるんだ」「戦争が悪いんだ」と戦いにこだわる黒蜥蜴と
「人は一人では生きて行けないんですよ」「人間が悪いんです」と個人にこだわる明智。
二人の微妙な価値観の違いも(原作を抜きにして)明確で良かったかな。

【明智春野】
すごく楽しそうに演じてたイメージが強いです。
余裕でゆとりで主演男役として一番格好良いのかもしれない時期。
でも大声で叫ぶと何を言っているか分からなかったり(爆) ←きっと立ち見で見たからだ、うん。
ラストの黒にピンクストライプのスーツがすごく似合ってて格好良かった。
【黒蜥蜴彩音】
初めてこんなに活躍している彩音嬢を拝見(昔は台詞が一言二言だったから)
少し滑舌が悪いかなぁ?ちょっと聞き取りづらい所がありましたけど、まだ若いから直るでしょう。
雰囲気は‘頑張って大人なイメージつくりました’な感じで、黒蜥蜴の衣をかぶってるような印象。
自然体じゃなかったのが残念。後半の妹としての幼めな演技は合ってました。
【雨宮真飛】
2番手なのにちょっと勿体無いですよね…
そもそも雨宮ってそんなに大きな役じゃないし(『黒蜥蜴』ってそんなに役いらないからな)
でも不器用で影がある格好良さが真飛に合ってました。
プロポーズの歌は歌い継ぐ3人の中で一番好きです。
【波越壮】
本当に幸せそうで良い味出してた。
誠実で真面目な普通の人間なんだけど、この世界には普通の人がいないからかえって目立つ(笑)
カーチェイスの場面で噂のオサとの掛け合いを見ました。
すごいジェスチャーが大振りで全然深刻そうじゃない(爆笑)それですぐ深刻な顔で歌いだすから面白い。
【その他】
・高翔刑事、寝るのもいいけどすごい格好ですから…
・桜小林少年は名探偵コ○ンが実写されたら絶対オファーが来る。
・とにかく役が少ないこの作品だから若手は殆ど書生か警官で扱いが勿体無かった気がします。
 みわっちの書生も結局どおなったか分からないんですけどね…
・野々嬢の演技の凄さに末恐ろしさを感じました。北島マヤみたいです。本当に上手。

TUXEDO JAZZ
「オギーでジャズ!」と観る前から勝手にすごい期待をしてしまった今回のショー。
蓋を開けてみれば、確かに楽しい。
大好きなジャズがふんだんに使われてて大好きな感じ。
でも何か物足りない。
今回は今までのショー4部作のような、難解な物語性の強い作品じゃなかったんですね。
ジャズという音楽性が最優先だったからなのか、はたまた路線変更か。
勝手に期待したこちらが悪いのですが、そういう意味でちょっと意表を突かれました。
今までと違うと言えば、オギー作品に必須その@な斉藤恒芳氏が今回参加してないようなんですよね。
これも残念だったなぁ…斉藤さん作曲の場面は大体(個人的に)外れないので。

でも全体的に1960年代アメリカのミュージカル黄金時代の映画作品みたいで、見た目はゴージャスだし
大人数で一つのモチーフを完成させる大胆さがあったりで単純に楽しかった!

■プロローグのビートはもう少し早めが好み(超個人的だから)
■絵莉さんの歌声にすごくしびれました。
 クラシックよりJAZZのように少しくだけた方が合ってるんじゃないかな?
 しっとりしてるけど、低音部分も自分の声としてしっかり出ててうっとりしちゃいます。
■フォーリーズの淑女シンガートリオ(梨花、絵莉、もう一人分からず)最高でした!
 女性トリオの掛け合いって大好きなんですよね、Andrews sistersとか素敵なハーモニーで。
■ナイト・ジャズの幻想の設定が微妙に謎のまま。オサ=真飛だったりするのか…?
 噂のみわっち女役はゴージャス美人でした、眼福眼福。
■オギー作品に必須そのAのシビ様。
 ついに本家本元に出演、でしたね〜 いやぁもうシビ様ショーでした。
 路線系でもなく、退団者でもなく、初日楽日でもないのにシビ様お一人が出られるともう拍手…流石。
 自由に歌うことを楽しんでる姿に、アダルトで時に淫靡な声色。
 もう劇場全体が蕩けていた。
 ついにはセンターで一人降りでしたからね。パレードの服もタイトでお洒落。
 どれだけオギーがシビ様を一目置いているかが分かるし、納得。
 いつか絶対にシビ様ワンマンジャズショーをやってください。


気付けば白鳥かすが氏も真野すがた氏も花っ子になってたのに殆ど気付けなかった…失敗です。
花組は本当に路線男役の宝庫なんですね。(宙組が一時路線娘役の宝庫だったように)
新公であんな良い役したのに本公はその他大勢の一人、なんて若手がごろごろいるような気がします。
悪い意味で勿体無い使い方。
でも良い意味で切磋琢磨して厳しくも磨かれてトップを目指していく。
そんな花組の伝統を少し垣間見た気がした公演でした。

2007.4.26