『アルバトロス、南へ』 こうして独り 立ち止まらずに先へ行く
ついに、ついに来てしまいました。朝海氏見送りイベント(?)的公演『アルバトロス』
荻田先生の溢れる愛情に包まれたこの公演。
今回は【世界観】【生徒別】と分けてレポートしたいと思います。
先にご注意。世界観はmahinaの勝手解釈のまま突き進みますので「そんなんじゃないぞ、ワレェ」
というご批判はご容赦ください。「バカがあんな見方してるよ、フーン」ぐらいで勘弁してください(逃)
ではアルバトロスな世界観から。
朝海氏が今まで演じてきた作品を振り返るショー仕立て+アルバトロス話、には変わりないんですが
2つに分けるより、今までの過去もひっくるめた1つの新しい物語と捉えた方が良い気がします。
一羽のアルバトロス(アホウドリ)の旅立ちと成長、そして未来へ向かうお話。
その中で過去と未来、回想と再想像がめまぐるしく入り乱れるような感覚。
赤字はmahinaの単なる感想です。
【第一幕】
月光が海に輝く静かな世界で一羽のアルバトロスがこの世に生を受ける。
それはあたかも導かれるように、でも本能的な不確かさによって自らの進む道を飛び立ち始める。
今回の印象的なステージングは光と影の巧妙な使い方。
月光の明るさと朝海氏が舞うその影が静かながら独特の世界観へと誘います。
仲間のアホウドリが一羽ずつ集まって、皆で南を目指して飛び立つ準備。
遅れつつ仲間と合流するアルバトロス。その視線の先はやはり皆と同じ‘南の海’で。
輝かしい未来が待っているかのように目を輝かせていざ出発。
しかし南を目指すはずが風の逆らいにあい、途中で仲間とはぐれ地上に降り立つ破目に。
これから出発!な感じの「Go South」はポップあり、ジャジーでアダルトありすごく楽しい場面です。
何と言ってもアホウドリ達の衣装(燕尾の所にパニエを入れて羽のようなふんわり感を出してる)が
可愛くて!!色違いだけで統一感を出しているのも仲間意識が感じられてGood!
地上に堕ちた所はゴミ箱の中。ここからアルバトロスは様々な世界を生きていく。
お洒落なレディに感化されて買物を満喫、美男子(?)になったアルバトロスは有頂天でバイオリン弾きに
小銭を渡す。「俺は物乞いじゃない」と怒ったバイオリン弾きとの対決あり、ヴィーナス(彫像)との恋あり、
なドタバタラブコメ風で話は進む。(アルバトロスはヴィーナスと共に彫刻の中へ)
唯一なコミカル場面。コムちゃんのちょこまかとした可愛らしさが前面に出てました。
他の生徒も大健闘でね…一番の爆笑はやはりハマコ氏のメール夫人でしょうか(笑)
『ワンタッチ・オブ・ヴィーナス』とか懐かしすぎてかなりツボでした。
実況CDダメになる位繰り返し聞いてたもんな…何気にコムちゃんの写真が載ってるんですよね。
彫刻の中から再び出てきたアルバトロス、今度はお洒落にスーツを着こなしクールに舞う。
そして舞台は熱い南の国、リオ・デ・ジャネイロへ。
義賊のソールとして街に現れ、一時限りの、でも忘れられない恋と身を滅ぼしかねない熱情が彼をおおう。
物売りのマールとしての世界も共有しつつそのままラテンナンバーへ。
『ノバボサ』は好きになりだした頃の作品なので感慨深いものが。ソールとして嫉妬のダンスを踊るのも
良かったけど、やはり実際演ったマールで「アマール・アマール」を歌う方が胸に響くものがありました。
白背景に過去の舞台映像が写し出されてこれまた印象大。
ラテンは気分も高揚するし、好きです。『レコラ』のTabooでは音月氏が頑張ってましたし。
普通に綺麗だったけど、まず筋肉の美しさに見惚れたのは私だけじゃない筈。
陽気な世界から一転、一人オープニングの静かな空間に戻るアルバトロス。彼は黒い(鳥の)姿になり、
仲間から外れ世界でただ独りの自分がこれから「どこへ向かいどこに行くのか」を問いかける。
鋭い眼光と機械的で硬質、ぎこちない羽の動きが他の白い鳥群の柔らかな舞と自分がどこか違う事を
思わせる。動いても異質な自分、それでも共に行きたい心との葛藤。
その気持ちが変化を起こしたのか、孵化するように白の姿に変わったアルバトロスは全身で自由と喜び
友情を表現し、一つになった今度こそ仲間と共に同じ南へ飛び立つ…かに見えた。
そこでリフレインする「どこへ向かいどこに行くのか」
一度ははぐれたアルバトロス。今度は自ら飛び立つ方向を変え、問いの答えを求め一人彷徨う。
一幕ラストのわずかな場面なんですが、一番印象的な所でもありました。
黒い鳥としての硬い孤独感から仲間を見つけた暖かな柔らかさへの変化、それでも一人の旅は
終わらない…もう上手く表現できないんですが、とにかく感動してしまって。涙が止まらなかったです。
本当に不思議としか言いようが。服の感じとコンセプトが『バビロン』の鳥の群舞に似ているんですが、
あれは大人数の迫力もあったし。でもこうすると人数関係なくダンスが生み出す世界で感動するのは
同じなんだなと思います。
【第二幕】
幕間中、映像に映っている立て膝でうずくまるアルバトロス。
二幕が始まると共に背を伸ばし白い大きな翼をはばたかせる彼。
遠く彼方を見つめるその先にあるものは何か。
一人の女性がこう呟く「彼をさがして、彼よ、アルバトロス…」
今日もまた独り彷徨うアルバトロスは南の波止場に、恋人と呼ぶには何かが足りない女の子と共に。
アルバトロスが背負う一つの闇、それは若かりし暴走の果てに失くした恋人の影。
どこか遠くへ行ってしまうような空虚な姿。彼を今に繋ぎとめるものは何もない…
そんな中、女の子と向かった場末のサーカス。ただの享楽かと思いきやそこは退廃世界。
過去の悪夢と一時の甘い夢が織りなすその世界でアルバトロスは過去の自分と対峙する。
勝手解釈が長いですね…(爆)ここから本格的なお芝居の始まりなんですが、私はこれから先の
各々のお話(今まで演ってきた役)をアルバトロスの前世だと捉えました。
何故ならば。どのお話も必ず最後には‘死’と結びつくから。
ただし一番最後のお話だけは現世と繋がっていると解釈。
恋人(有沙)を過って撃ち殺してしまった後でのお話が天勢演じる女性との場面。
その後、先に南に逃げた彼は舞咲演じる女性と出会い最初の波止場の場面に繋がるという感じで。
そういう流れで見るのもありじゃないかな、と。(だってオギー何も書いてくれないんだもん)
波止場の場面はアルバトロスの虚ろな姿とサーカスが印象的。
ここで『パッサージュ』を持ってくるとは…嬉しすぎてにやけました。
あのサーカス場面ってすごく江戸川乱歩な世界観だなと思います。
美しいけどおどろおどろしいのよね、何か。
サーカスの見せる初めの夢は19世紀末のオーストリア。
皇太子と一女性との世間的許されざる恋と自ら望む、革新的未来への破滅の音を聞きながら。
自暴自棄になりつつも女性がもたらす一時の安らぎ。
私はアホウドリに似ているのだと、真っ白な所が。そう言ってくれる彼女こそ私の全て。
もはや失くすものは何もなくなった二人はその身だけで南へ。そこで穏やかに育まれる愛…
しかし結末として待っていたものは彼女を縛る世間や良妻という重荷から逃れる唯一の方法、投身自殺。
そして自身も銃口を向けて命を絶つ。
初めは『エリザベート』のルドルフの世界観が、次第に『アンナ・カレーニナ』とリンクしていくのが見事。
切なくて悲しいけど、それが一層真っ白な美しい世界を強調してて。
有沙さんとのデュエットダンスがまた美しかったです。
月明かりの海の映像が再び出てきて、それが影を作っていて。舞台に奥行きが出るのが素敵。
投身自殺の時にアホウドリの白い映像が一瞬壊れたかのように止まるのにはドキリとさせられました。
舞台は第2次世界大戦下のパリへ。ここでのアルバトロスはドイツからの亡命者、ラヴィック。
明日をもしれない命の中で数少ない友達と今を酒の力で謳歌する所に現れた女主人、ジョアン。
彼女は自分を探し回ってくれた。しかし彼女が他の異性と親しくしているのを知ってしまった。
今まで以上の関係には戻れない…「俺は恋人を他の男性と共有する事はしない」と告げるアルバトロス。
彼女は「結局、貴方が求めているものは私ではなかった」という言葉を残し去っていく。
折りしも時代は戦時中、これでいいと自らを諭し戦争が終わったら南へという一縷の望みに期待を託し
彼は戦争の世界に身を投じていく。その果てに待つものは…言わずもがな。
『凱旋門』大好きでした。朝海氏はラヴィックとしてだけど、脇役として音月氏がハイメを演ってて。
これもコムちゃん演じてましたもんね。何だか一度に色々思い出されてお得な感じです。
ラヴィックとしてのアルバトロスが死んだというのは元々のお話からも想像出来るけど、やはり
物語の最後に映像の白い鳥が落ちていったのを見せる事でより鮮明に理解出来ると思います。
細かいけど、こういう演出って好きだなぁ。
「嫌だな、今日は会いたくなかった。部屋代が溜まってるんでね」という台詞、本当はハイメだけど
コムちゃんが言ってくれて設定が変わる不安感より、不思議と嬉しさが込上げます。
より南へ辿り着いたアルバトロス。しかしその南でも一果てるとも知れぬ戦いが続いていた。
信念を持って皆の為に戦っている自分。しかしその意義さえも分からなくさせる戦争。
革命軍から逃げ出した自分を助け、かくまってくれた女性はそんな事は関係ないと言う。
分かるのは兵隊は皆酷い事をする。そして私の為の兵隊はいないという事だけ。
しかしわずかな時間の交流で持っていたものは互いに同じ。ささやかな誤解が気持ちに変化を生む。
昨日は取り上げられ、明日もなく、ただ今いるという事だけが確かな事。
アルバトロスを敵に売るつもりだった女はその確信から行動へと駆り立てる。
彼の為に唯出来る事は彼を逃がす事。「私は貴方の昨日になりたい。だから貴方は私の明日になって」
言葉を背に受け彼が言えたのは「南で会おう、待っている」の一言。
その言葉が彼女の明日に繋がる、たとえもうすぐ途絶える命だとしてもそう思っている限り。
ここはオリジナルストーリーだと思います(過去の作品だったらスミマセン!でも記憶にない…)
話の流れは簡単なんだけど、二人芝居の台詞のやりとりが絶妙でした。
上にも載せたけど、印象的な台詞が多くて…天勢嬢の一人気丈に生きている女の子が健気。
生きる為の術も分かってるけどいつかは誰かが迎えに来てくれる事を望んでる、
それが(結果的に)アルバトロスだった。
彼の為に何か出来た事が一番嬉しかったんじゃないかなと思います。
最後は撃たれて死んでしまうけど、直前まで彼が待っているという明日の希望を持てたのだから。
夢も希望も全てを奪い取る戦いの虚しさも同時に分かるようなお話。
再び波止場。サーカスが見せたのは夢幻か、今まで通りの穏やかな港町。
サーカスから出た女の子が必死にアルバトロスを探している。
そしていとも当然のように隣にたたずむ彼。
優しい微笑みに否定する事のない行動、だけど彼の視線はいつも遠くのまま。
「本当はもっと南に行きたいのに…またこんな所で捕まった」
そんな女の子の呟きを聞く事もなく彼はまた一人止まる事なく飛び続ける。
分かっているのは、ただ南へという事だけ。
アルバトロスの未来は描かれてません。
分かるのはこの波止場さえ、もうすでに過去だという事。彼はまた先に南へ飛び立ってしまった。
そこに終着点はないようにも感じられます。それは死ぬまで飛び続ける鳥、アホウドリだから。
ここで退団を決意した朝海氏の現状とリンクするんですね。
一人先に飛び立つ姿、そして最後まで朝海ひかるとして存在し続ける姿がアルバトロスそのもので。
アルバトロスとしてどうなったかが描けないのは朝海氏の未来がまだどうなるか分からないから
であり、後は各々の想像でしか捉える事は出来ないのだと思いたいのです。
【フィナーレ】
ここからは単純にフィナーレとして考えます。(少しアルバトロスとリンクする部分もあるけど)
『パッサージュ』‘硝子の空の記憶’の場面はオギーファンとしてもう涙なしでは見られません。
ハマコ氏が相変わらず蕩けさせるような美声ですし。そしてここがちょっとリンクするんですよね。
ダンスも1幕ラストの白い鳥群と同じ振りだし。あまり意図が分からないので深く触れないけど。
あと印象に残ったのは『エリザベート』の‘闇が広がる’
音月トートとの絡み、下級生ながら全然負けてませんでした。案外トート似合うかもな…
あの押しつぶされそうな不安と愚かな夢への輝きの両面性を出すのが朝海氏は本当にお上手。
突然カンフー調になるのはちょっと失笑ですけど(曲調の違いについていけない)
締めは『メガ・ヴィジョン』のコーラス。7人だけなのにあの声量と感情が入っててぞわぞわと鳥肌が。
陳腐な言葉ですが、本当に凄い。
変に考えるより単純な方が感動して胸に沁みる事があるけど、これがいい証拠だったかな。
一人一人挨拶&バンド紹介していく中、コムちゃんだけいないんですがここでバックに
アルバトロスとして踊る映像が大きく写り皆は上を指差し…アンコールとして一人登場。
背景の映像と皆の演技がちょっと「コムちゃんは星になったんだよ…」みたいな悲しい系にも
思えたので複雑でしたが、一人真ん中で歌う姿は感慨深いものがあったのでいいとします。
唯一の後悔は『月夜歌聲』を全然知らないという事。
あれは著作の問題でビデオ化になってないから幻の一作ですよ…(涙)
知ってたらもっと胸にくるものがある事でしょう。
非常に長くなってしまいました(謝)ので最後は完結に。
とにかくこういうショーが見たかった、という要望に全て応えてくれたかのような荻田先生。
全てに感謝します。現実と虚構が上手く影響しあい、あらゆる面の朝海氏を見せてくれた。
このショーが通常の公演だったらと心底思う程、私にとって殆どが完璧な公演でした。
(そうなったら演者が死に物狂いでしょうけど)(かなりのダンス量だし)
一生の、永遠の記憶に残る思い出をくれて有難うという気持ちでいっぱいな、幸せな一週間でした。