−泣くのは弱いから−
「泣いてるの?」
あなたはそう言ってかがんだ私の隣にやってきた。
どう答えればいいの、あなたに。
昔からよく泣く子だったと思う。
可哀相な物語を読んでは同調して涙し、感動的な映画を見ては頬が涙で濡れてた。
けれど 一つだけ他と違うのは。
人前では決して泣かないという事。
公な所で泣けるのは周りが私を見てない空間だけ。
私の泣いている姿なんて絶対見られたくない。
仲間の輪から抜け出して、そんな事を考えながら泣いていた時に突然隣に来た男。
一瞬にして我に戻る。
なんで来るのよ。あなたのせいでまた逃げなきゃ。
「…ほっといて」
「なんで?どうしたの?」
「どうもしない。大丈夫だから」
「…そう?じゃ落ち着いたらこっちに来なね」
どうやら彼は深い詮索をするつもりはなかったらしい。
そのまま楽しそうな輪の中に戻っていった。
自分の空間が乱されたとはいえ、元の静かな空間に戻った事でほっとした。
けれどその反面、止めどなく涙が零れ落ちてくる。
−君はどうして一人で泣くんだ?−
頭の中でそんな言葉が反響する。
「分からないわ。でも泣いている姿なんて人には見せられない。私は弱くない、一人で大丈夫だもの」
−弱い部分を持たない人間なんていない。弱いのは悪い事ではない。−
「私だって頭で理解しようとしてる。でも泣きそうになると体が勝手に動くの」
−何か…負い目でもあるのか?−
「別になにも。でも人前で泣いたってどうにもならないでしょ。
泣かれたら周りも困るだろうし、空気が一瞬にしてさめるわ。だったら一人で泣く方がマシ。」
−それで泣いた理由が解決するのか?相談もなしに−
「理由?理由があって泣くのは泣いていないも同然だわ。理由に付属した行為ね。
本当に泣く時は理由なんてないのよ」
−分かったよ。お前が足りないのはただ一つ。 …になる事だけだ−
「え?聞こえない。なんていったの?」
頭の中で反響していた声はそれっきり聞こえなくなった。
零れ落ちていた涙もいつの間にか止んでいた。
私は化粧を直し、仲間の輪の中に戻っていく。
「もう平気、私は弱くない。一人で大丈夫」
そう呟いた自分の言葉に、
後ろからの曖昧な言葉がかき消されてしまった事など
私が知る由もないけれど。
−弱い事を素直に認めれば 少しは楽に生きられるのに−
−辛いと 誰かに打ち明けられれば −
2005.11.6
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