−朝には紅顔ありて夕べには白骨になる−
彼の前に一枚の紙を差し出す。そこに書かれた言葉
‘朝には紅顔ありて夕には白骨となれる身なり’
「なんですか、これ」
「問題です。この意味はなんでしょう」
「あさにはべにがお…?」
「朝(あした)には紅顔(こうがん)ありて、よ」
「…すみません。皆目検討もつかない、降参です」
早すぎる降参だこと。しらっとした顔でちっとも考えようとしない所が憎らしい。
まぁそれだけ早く真意を聞きたいという事かしら。
「この世は無常で、人の生死は予測できないって意味よ」
「そうなんですか。でまた何故?」
「この言葉を聞いた時、私はまずカメラを考えたわ。私にとって死ぬとはカメラを手放す事なの。
だからあなたにとって死ぬとはどんな事かなと思って」
話を聞きながらみるみる顔が翳っていく。
「カメラが一番なんですね」と不服顔。
ごめんね、ちょっと意地悪な牽制をしてみた。
分かっているけど知らぬ顔をしてあなたの答えを待つ。
「僕にとっての死は…言葉通り君がいなくなる事ですよ」
予想通りの返答に頬が少し緩む。
小さく紡がれたその言葉を待っていたのです。
ああ、なんて愛しいの。こうも想ってくれるなんて。
「馬鹿ね、それは全く的外れだわ。
私はあなたであなたは私なんだから、置き去りなんてありえないわよ。
そうじゃなくてあなたが自分じゃなくなる事が何なのかを聞きたかったの。」
きょとんとした顔から瞬時に幸せそうに笑む姿を見れて満足。
さぁこれでおしまいと席を立とうとした瞬間 腕を掴まれて
「それなら君も的外れです。
どう考えても僕が自分じゃなくなる時は全て君が関係しているもの。
嬉しい事も悲しい事もね」
ああ、いつも弱いのにどうして時々こんな嬉しい言葉をくれるの。
もう降参。
サラリと答える彼を見ながら、
不覚にもこの答えは的を得てると思ってしまった。
06.9.13
-----------------------------------------------------------------------------------------------------
写真家彼女シリーズ。
彼女は物知り(私はこの言葉知りませんでした…)
相手を自分の良いように嵌めようと思ったら嵌められてしまいました、みたいな。
どちらが主導権を握っているのかいまいち定まりません。
material by Heaven's Garden