I Love NINAGAWAジェンヌ


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ようこそお越しくださいました。
このページは蜷川実花著『WE LOVE ジェンヌ 極彩TAKARAZUKA』を元にmahinaが勝手解釈した小話を置いております。
読者様のイメージを壊す可能性がありますので、まず注意事を。
独自要素を多く含んでおりますので、苦手な方は速やかに退室することをお薦めします。
ご覧になってからの苦情は一切受け付けません。自己責任で宜しくお願い致します。
なお作者様、出版社様とは一切関係ありません。
当サイトに掲載されているものの無断転載はお断りします。
最後までお読みくださり有難うございました。以下生徒名をクリックしてご覧下さいませ。  2005.10.10


和央ようか / 湖月わたる / 春野寿美礼
朝海ひかる / 瀬名じゅん / 安蘭けい
貴城けい  / 大空祐飛 / 水夏希
霧矢大夢  / 大和悠河 / 彩輝直
紫吹淳



















和央ようか−攻防戦の果て−


ついに追いつめた、黒い怪盗
金銀財宝からマダムの心まで何でも盗む 巷でうわさのアイツ
そしてつきとめるまで 私の恋人だった人

気を許したつもりはない

カンカンカン―夜の闇を喰らい尽くしそうなほど眩い摩天楼の一角
階段の硬質な音を響かせてアイツを果てまで追いつめた
「君に俺は撃てない」  「撃ってみせるわ」
今までの想い出を閉じ込めて
向けた銃の先に見えた物哀しげな笑顔が彼の武器
そんなこと 分かっている筈なのに

パァァン!
その瞬間 彼の姿は無数の禍々しくも美しい青い蝶に化けて摩天楼の闇に溶けていった

「…次こそは貴方を捕まえてみせる」

「―待ってるよ また君が俺を追いかければいい」
と言わんばかりのやさしい風が私のそばを通りぬけた

一筋の涙に気付いたのは もっとずっと後のこと

△top






























湖月わたる−ギャンブラーが落とした夢−


夜のとばりが落ちても決して灯りが消える事のない人工的な街。
ネオンサインに照らされて 火照った体を静める事無く
人々はいつまでも遊びにふけってさめる事のない夢を謳歌する。

そんな街の片隅、人通りの少ない路地にいつとも知れず現れた空間。
私はそこを知っている。
貪るたくなる程に赤い血のような壁に囲まれて ぽつんと置かれたゲーム台。
そこにいる人は−この上もなく魅惑的だった。
葉巻を持ってギャンブルという名の享楽にふける彼。
余裕そうな顔をして 瞳の奥に覗かせる真剣な姿は少年のようで私も思わず笑う。
と思えば、虚ろな表情で思いにふける。
その姿はどこか寂しそうで 思わず駆け寄ってしまいたくなる程。
だけどここは−彼だけの−秘密の空間。

そんな彼が小窓から見ていた私に気付く。
締めてたネクタイを片手で緩めながら窓に近づき無言で私を見つめてきた。
「こっちに…来いよ」そう言っているようで 私は視線を外せない。
「俺は…おまえがいつもそこから覗いていたのを知ってる。俺に興味があるのなら…いつでも入ってくればいい…」

でも私がその空間に立ち入る事は決してない。
その空間には扉もなく、誰も入る事など出来ないのだ。
そしていつのまにか 夢の跡形なく消えてしまう、彼ごと。
これは夢か幻か。
ギャンブラーが一夜見せる夢。
私はその夢に思いに馳せる。
ただ一度見た夢に酔って 私は彷徨う。
今宵はどの街で彼がいざなう夢の続きを見れるのだろうか。

△top






























朝海ひかる−召しませ 極上スイーツ−


今日は特別のプレゼント
あなたはだあれ?
少年のようにあどけなく、少女のように可愛らしい
不確かな性の境界が私の胸を高鳴らす

サテン生地のピンクリボンが良く似合う
そのゆるやかな甘い拘束さえ心地良いかのように
絶えず不敵な微笑みで私の心を掻き乱す

あなたは私だけのあなた
そんな征服心に酔いしれて
私はそんなあなたにもう夢中なの

今宵もあなたを閉じ込めて
どんな甘い夢をみましょうか?

△top






























瀬名じゅん−この駆け引きを楽しんで−


彼はこの街一番のジゴロ
いつでも相手を和ませて 笑いが絶えない 人気者

「いらっしゃい 今夜もご使命ありがとう」
そう言って 手の甲にキス
甘くてくすぐったい言葉の雨が視線の上から降り注がれて
赤ら顔で貴方を見れば 余裕な表情で悠然と微笑む
恋愛ドラマでもやらない事を さも当然かのように成し遂げて

なんて くすぐったい快感

でも絶対誰かの虜にはならないの
どんなに酔った振りをしてみても
猫なで声でささやいてみても
貴方は誰にも惹かれない

なんて じれったい快感

でも知らないとでも思ったの?
ふとした仕草にみせる 孤独感
私は貴方しか見えないんだもの
「さぁ これから何をしましょうか?」
しばらくは囚われた振りをしていてあげる
彼はジゴロなハンター そして私も同業者
最後に勝つのは一体どっち?

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安蘭けい−その瞳に宿したもの−


時は大正。
今までの流れの中に新しい波が押し寄せ 安穏とした暮らしを歪ませる退廃的な時分。
そんな胸の奥に疼く不安を打ち消すかのように 男どもは夜ごと郭を訪れては一夜限りの夢をみた。
それは儚いのに 片方の思いなどお構いなく。
郭とは−男が通うもの。

郭街から少し離れた街中に、その家はあった。
いたって普通の小さな家で 何があろうとも思えぬものを。
この家にはこんな噂がたっていた。…ここに住む主は訪れる女性を喰ってしまう…と。
「喰らわれるじゃ気味悪がって誰も近づかないだろうに。」
「それがおかしな事に女性が絶えずやってくるらしい。」
「なぜなんだい。」
「あたしにもよく分からないさ。どの話でも聞いてるのはその主が美男子だって事だけさ。」
「ああ薄気味悪い。嫌な世の中になっちまったねぇ。」

そんなすれ違いざまの会話を、はだけかけた着物の裾をまくりながら聞いた。
無意識の中とっさに郭から逃げてしまった自分。
もう近くにまで追っ手が来ているに違いない。
逃げようと思って街中にきたみたけれど、その終焉は分かりきった事。
なんど連れ戻された姐さん方を見てきたことか。そして悲惨な結末…
同じ行く末なら喰われてみるのも一興だ。
そんな自虐心も手伝って、気付くと私はその家に入っていた。

灯りはついていないのにほのかな光が家を照らす。それは月の光。
男を待つ間の月の光なんて自分が見透かされるようで嫌いだったのに、ここの光はどこか優しい。
そんな朧な優しさに導かれ、私は誰に言われる事なくただ一つの部屋へ真直ぐ歩いていった。
襖を開けようか、引き返そうか…ほんの一瞬の戸惑いの後、この目に映ったその光景は何とも形容し難いものだった。
「…いらっしゃい」襖を開けた彼の前で私はただ立ち尽くすしかなかった。

目の前にいる男は確かに美男子だ。郭に来るような野暮な男どもとは違う。
何より吸い込まれそうなほど輝いてみえるその瞳。
髪を伸ばし後ろで一つにまとめている姿は女性のようにもとれる。
中性的なその妖しさに皆惹かれてしまうのだろうか。
ふと声が聞こえた。

「何をしにきたんですか?」
「…喰われに。」
「それはなんとまぁ恐ろしい。お嬢さん、私はそんな事しませんよ。」
「じゃあここで何をしてるの?」
「私はただいるだけ。この家にいるだけです。時に訪ねてくる方々とお話をしているだけですよ。」
「本当にそれだけ?だってここには床の用意がしてあるわ。そういう事をしているのではなくて?」
「ふふふ、好奇心の強いお嬢さん。そういう事がお望みならなんなりと。」
「違う!!私は…」
「そんな顔をしないで、お嬢さん。話をしましょう。私は何でも聞きますよ。どうぞ思うがままを話してください。」

それからの記憶はあまり残っていない。気付いたら彼の隣で語っている自分がいた。
思い出したくもない生い立ち、郭での日々、逃げてきた現状…
「あなたは逃げてきたのですね。」
「ええ逃げたわ、郭から。これで明日をも知れぬ我が身…か。」
「いいえ、そうではなく。今の全てと縁を絶ち切ろうとしたのでは?」
「…そうかも…しれない。だから私は喰われきたのよ。」
「こちらへ…来て、お嬢さん。」柔らかそうな蒲団の上に横たわった彼の姿は郭で慣れたこの身から見ても艶かしく、私を捕らえて離さない。
彼に顔を近づけて私は何故か安心してしまった。
きっと喰われるに違いないのに、私の髪の一房をとって口づけをする優美な動作に酔ったから。
ふいに視線を外す私を見て彼は可笑しそうに言う。
「こんな事で頬を染めるなんて あなたは本当に郭育ちなのですか?」
「だってあなたは郭にくる奴らとは違うもの。」
「違いませんよ、同じ男です。ただ私は話を聞いてあげるだけ。そして…」

声色が急に変わった。優しいまどろみの世界から妖しく甘美な世界へといざなうように。
「お嬢さん…私を見て。私だけを」
本能だろうか?即座に見る事は出来なかった。私はすぐにでも振り向こうとしたのに。
彼は大きく温かい手で私の顔を包み、顔をむけさせた。
私の目に映るものは彼の部屋と彼の姿。
いや、次第に周りには闇が纏い、無の中ですがるべきは彼の瞳だけだった。
虚ろな意識の中に彼の声が響いた。
「私が怖い?」
「いいえ。」
「君は逃げてきたのでしょう。今生と縁を切ろうとしてきたのでしょう。」
「ええ。」
「なら私に捕らえられなさい。ここはいつまでも優しい。」
「いい…え。」
「お嫌ですか?不思議な方だ。喰われにきたとおっしゃったじゃないですか。」
「いや…じゃ…ない。最後にあなたの…お姿が見たい。」
「可愛いお嬢さん。それがあなたのお望みならば。」
私の記憶に残った最後の姿。それはやはり禍々しくも美しい、大きな瞳の彼だった。

「私は…あなた方が望む事しか出来ないのです。」淋しそうな微笑を浮かべて言ったそんな言葉が私に届くことはない。
ここに来た女性達は喰われた訳でなく 自ら籠の中へ入っていったのだ。
そして 私も。
私はもう二度と何に縛られることなく漂い続けるだろう。
瞳という名の甘美な籠の中で。

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貴城けい−極彩世界に閉じ込めて−


瑪瑙に真珠にエメラルド 宝珠の王様はダイヤモンド
色とりどりに主張する 眩い世界、宝石箱

けれど
そんな籠の中で、何より一番輝いているのは貴方
宝石箱を開けた途端にくるくるくるりと回りだし、
人形特質の無機質な笑顔につつまれて
宝珠の輝きを一身に受けた、何より眩しいその存在
時に白いコートで貴公子風に微笑み、
時に冒険家のように鋭い視線で世界を貫く
宝珠の魅力を吸い尽くし、変幻自在の美しさ

人に愛され愛でられて
箱を閉じるまで回り続ける貴方には、
最上の美しさがふさわしい
いつとも知れぬ終わりを夢見る貴方がいる宝石箱
そこは不変という名の極彩世界

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水夏希−鏡の狂楽−


どこにでもあるような丸鏡。自分を映してみせるもの。
けれど夜になれば決して見てはいけないもの。
そんな古くから家に伝わる言い伝え。

漆黒の闇夜を拒むかのように、かすかな光を世界に溶け込ませた丸鏡。
その硬質な物体は少し歪んだかと思えば柔らかな波紋を広がらせる水鏡に変わる。
幾重にも重なる波紋、いつの間にかそこに映された姿は私ではない。
目の前には涼やかな目をして憂いを帯びた彼がいた。
濡れたスーツを身にまとい、乱れて滴った髪が何とも艶かしい。
ふと、水鏡の向こう側から覗いている私を見つけると彼は不敵に微笑む。
そして涼やかな水の音を奏でながら私を誘う。
しなやかな長い手で薔薇を千切りながら水鏡から手を伸ばし、じいっと見つめて。

私の指はまるで時が止まっているかのようにゆっくりと鏡に向かう。
彼は満足そうな顔をする。
でもその水のような柔らかな表情の裏に
氷のように冷たくて、得体の知れない恐ろしい一面を覗かせているようで
−このまま戻ってこれなくなりそうで−
私は勢いよく水鏡を波立たせた。
彼の姿は波紋で歪み、鏡は次第に硬質な、元の丸鏡へと戻っていった。
最後も彼は無機質な表情で目で犯されてしまう程、私を見つめながらその姿を消していった。

ふと気付くと後に残ったのは無数に散らばった薔薇の花びら。
彼からの最後の贈り物。
引き込まれていったらそのまま楽しい時は続いていただろうか。
鏡の中で、現実世界も忘れて彼を自分のものに出来たのだろうか。
残った後悔を胸にしまっても、薔薇を見つめて今でも思うは彼の視線。
そして今夜も私は漆黒の闇の中で彼だけを見続ける。
闇夜に起こした一度の過ちで 私は彼の虜になった。
世界を隔てて永遠に続く、私と彼の水鏡の狂楽。

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